Quadravoxで純正律でハーモニーを作る方法
さて、先日無料配布まつりが開催されたQuadravoxですが、日本語のマニュアルとか使い方サイトが見当たらなかったので、自分で調べた事を書いてみましたが、今回はその続きで、ハーモニーを純正律でハモる方法について書こうと思います。
結論から言うとセント値を以下の通りに修正します。
+3rd or -6th長3度(メジャー) -14セント
+5th or -4th 5度 +2セント
+4th or -5th 4度 -2セント
+6th or -3rd 長6度(メジャー) -16セント
+3rd or -6th 短3度(マイナー) +16セント
(細かい設定方法については後述もしくはこちらの記事をご参考下さい。
http://subculakibapapa.hateblo.jp/entry/2019/10/30/180000)
では結論を話したついでに、純正律について軽く話しておこうと思います。
純正律とは簡単に言うと自然法則に則ったハーモニーみたいなもんで、古くはピタゴラ音律まで遡ります。
ピタゴラスイッチの名前でも有名なピタゴラスですが、彼は音の世界にも有名な科学実験を残しています。
ピタゴラスはある時、鍛冶屋のハンマーで打つ音を聞いて、その音が重なった時にハーモニーが出来ることを発見します。
そして、そのハーモニーはどうやらハンマーの重さとどうやら関係しているのではないかと仮設を立て、1本だけ弦を張った先に重りを付けた実験装置を思いつきます。
そして、重さによって弦の張力が変わり、重さが整数倍の時にきれいなハーモニーが生まれることを発見しました。
最初は2倍のオクターブ、次に3倍の5度、というように、音の高さが違うと響きも変わってくる事を発見しました。
その当時まだピアノは開発されていなかったのですが、原型となるようなチェンバロみたいな鍵盤楽器はちらほらと出始めては来ていました。
そして、ピタゴラスは5度のハーモニーの美しさに心を惹かれ、この5度を重ねていった音律、即ちピタゴラス音律というものを発案するのです。
ピアノの鍵盤は全部で12個あり、5度ずつ上がったり下がったりすると、最終的には元に戻ってきます。(この5度の上下で戻る図をサークルオブフィフス(日本語だと五度圏)と言います)
なので、ピタゴラスが考えた原理で行くと、ドから始まって、5度ずつ上がって行って12回繰り返すと再びドに戻ってくる、、、はずだったのですが、神のいたずらか、実は厳密には微妙にズレてしまうんですね。(その差、いや微差数セント(1セントはオクターブの1200分の1))
まあですが、この数セントの違いで音の共鳴に色んな影響を与えるのがハーモニーの面白いところ。
そして、ピタゴラス音律は5度のハーモニーはすごく綺麗だったんですけど、3度の響きはあまりきれいなものではなかったんですね。
簡単に考えると基本的に周波数は比で考えられていて、何対何の数字がシンプル、つまり一桁なほど響きが綺麗になります。
なので、例えば81対64よりも、5対4の方がきれいな響きなのです。
つまり、ドの音の周波数が64✕○でミの音が81✕○よりも、ドの音の周波数が5✕△でミの音が4✕△の方が響きが綺麗になるという事です。
そう、実は前者がピタゴラス音律のドとミの比率で、後者が純正律のドとミの比率です。
ピタゴラスが活躍していたころまでは声楽が中心だったので、ハーモニーといっても、せいぜいたオクターブか頑張って5度が中心でした。
しかしその後3度の響きの綺麗さにも注目され、3度が重要視されていくんですね。
ところが、ピタゴラス音律で調律した楽器で伴奏してそれに合わせて3度でハモると、ちょっと変な感じになっちゃう訳です。
そこでバルトロメ・ラモスによって考案されたのが純正律な訳です。
純正律はピタゴラス音律に対して主に3度と6度(下3度)を修正し、それぞれの音がシンプルな一桁の整数比に近いように調整されました。
これによって3度の音を獲得した西洋音楽ですが、実はまた新たな問題がここで発生してきます。
以降の音律の話はちょっと続きを別で書こうと思います。
(純正律についてはこちらでも軽く話していますのでよろしければ。。
http://subculakibapapa.hateblo.jp/entry/2019/09/21/180000)
横道にそれまくったので、そろそろ本題のQuadravoxで純正律でハモるやり方について書きますね。
まあ、簡単に言うと、今の僕らが使っているのは平均律といって、オクターブ間の周波数を1200分割して100ずつ鍵盤に割り当てたのが平均律と呼ばれている僕らが慣れ親しんだドレミファソラシドなですね。
それで、実はその前にちょっと違った響きのドレミファソラシドが存在していて、その一つが純正律な訳です。
そして、純正律は平均律に比べて3度と6度のハーモニーがより自然なハーモニーに近いのできれいな響きになってくれるって訳です。
そう、Quadravoxで「+3rd」とか「-3rd」の時のハモリが純正律にするとより綺麗になるってな感じです。
では実際にどうするかというと、「interval」の横に、「cent」ってありません?
そう、それがセント、つまりオクターブの1200分割したメモリなんです。
だから、このセントをいじって、平均律から純正律の値に変えてやれば良いわけです。
主に使いそうなセント値を以下にまとめて記しますね。(冒頭に書いたのと同じです)
+3rd or -6th長3度(メジャー) -14セント
+5th or -4th 5度 +2セント
+4th or -5th 4度 -2セント
+6th or -3rd 長6度(メジャー) -16セント
+3rd or -6th 短3度(マイナー) +16セント
とこの様に、ハモリたい音程についてセントを調整してやれば、Quadravoxくんを使って純正律でハモってくれるようになります。
長3度と短3度が同じ+3rd or -6thとなっているのは、Quadravoxの場合intervalでは長短を区別しておらず、その下のスケールで分別するようになっていますので、長3度で明るくハモリたければ、下のスケールでメジャー(もしくはメジャー系のスケール)を選択し、反対に短3度で暗めにハモリたければ、下のスケールをマイナー(NaturalMinもしくはその他のマイナー系スケール)に設定してあげる形になります。
使い方が分からない場合はこちらにて絵付きで基本的な操作を書いてますので参考にしてみて下さい。
http://subculakibapapa.hateblo.jp/entry/2019/10/30/180000
それから、純正律でハモる時の注意点についていくつか書きますね!
さっき、純正律って実は問題点があるって言ったじゃないですか、その問題点がある関係上、いくつかのメロディや音に対して純正律だと逆に濁っちゃう場合があるんですよ。
なので、そこは調整して聴いてみた感じで適宜その曲に純正律のハモリコーラスが適しているかどうかを判断した方がいいです。
また、現代ではほとんど全ての楽器で平均律での調律がされていますので、オケが平均律で歌とハモリコーラスが純正律だと逆に綺麗に聴こえない場合があります。
なので、僕の大体の感じですが、弾き語り系の歌で伴奏がギターだけとか少ない楽器の数の時は避けた方がいいと思います。
逆に同じ弾き語りでもピアノ系の時は電子ピアノだった場合、音律を調整する機能が大体付いている事が多いんですよ。
なので、ピアノの音律を調整した上で、ハーモニーもそれに合わせるというやり方にするとより伴奏とハモリコーラスが綺麗に奏でてくれます。
で、この時使う音律は純正律ではなく、ベルクマイスターもしくはキルンベルガーIIIという音律を使用して下さい。
理由は先に出た純正律の問題です。
そして、それを解決したのがベルクマイスター音律であり、そこから更に発展させたのがキルンベルガーIIIという調律方法なのです。
なので、ピアノ弾き語りの方は電子ピアノの音律(もしくは生ピアノの音律を変えられる方は自己責任にて)をベルクマイスターかキルンベルガーIIIに変えて伴奏をして歌ったものに、ハモリパートのセント調整を以下のように行います。
キルンベルガーIII
+6th or -3rd 長6度 -5セント
+3rd or -6th 短3度 +5セント
その他は純正律と同じ
ベルクマイスター
+3rd or -6th長3度(メジャー) -10セント
+5th or -4th 5度 -4セント
+4th or -5th 4度 -2セント(同純正律)
+6th or -3rd 長6度(メジャー) -2セント
+3rd or -6th 短3度(マイナー) +2セン
後、3度の音が主に違いが出るポイントなので、3度の音をあまり使わないパワーコードとかで伴奏するロックやパンクなどは意外とハーモニーを純正律にしてみてもハマるかもしれないですね。
因みに、バッハがよく用いていたというのがベルクマイスター音律で、バッハの弟子であるキルンベルガーがそれを発展させて発案したのがキルンベルガーIIIという音律でこちらはベートーベンが好んで使っていたと言われています。
(因みに、キルンベルガーIとIIもあって、こちらは純正律に準拠した音律で、明らかにこの音律を意識して作られたという楽曲もあったりします)
なので、日本でバッハのウェルテンペラメント(快適音律)クラービア曲集を平均律クラービア集って誤訳されてるんですけど、本当は平均律ではなく、ベルクマイスター音律で演奏していたと言われるのが濃厚みたいですね。
なので、よく有名な演奏家の方などは古典やロマン派などの近現代以前の楽曲を演奏するのにこの調律を施していたり、複数の音律で調律されたピアノを使い分けたりしているようです。
また、近現代以前の作曲家達は自分で調律方法や音律をそれぞれに持っていたとも言われるように、現代の演奏家の方でも部外秘の自分だけの音律を持たれている方もいるようです。
いやー、Quadravoxの話どこ行った?
今日はそんなところです。